こんにちは、レディースフィッターの仲村です。
オーダースーツというと、「特別な日に、一生モノの一着を作る」
そんなイメージを持たれる方が多いかもしれません。
もちろん、思い出に残る一着を仕立てるのもオーダーの大きな魅力です。
ですが、私たちが本当にお伝えしたいのは、
スーツは“完成した瞬間”がゴールではなく、
着る人と一緒に時間をかけて“育っていく”もの
という考え方です。
今日は、「育てるスーツ」という少し変わった視点から、
オーダースーツの楽しみ方や、付き合い方のお話をしてみたいと思います。
変わるのはスーツじゃなくて、“着る人”のほう
スーツを一度作って終わり…にならない理由。
それはとてもシンプルで、「人は変わる」からです。
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体型が少しずつ変わっていく
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年齢を重ねて、似合う雰囲気が変わっていく
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役職や仕事内容が変わり、求められる“見せ方”が変わっていく
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結婚・出産・転職・独立…などライフイベントが訪れる
10年前に“完璧”だと思って作った一着も、
今の自分に100%フィットするかと言われると、
実はそうでもなかったりします。
だからこそ、オーダースーツは「作って終わり」ではなく、
今の自分に合わせて“調整し続けることで、育てていくもの”だと私たちは考えています。
「育てるスーツ」って、具体的に何をするの?
「育てる」と言っても、難しいことではありません。
たとえば、こんな小さな変化を重ねていくイメージです。
1. 体型に合わせて、少しずつ“微調整”する
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ウエストを少し詰める・出す
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パンツの太さを、今の気分に合わせて整える
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体重の増減でパツパツになった箇所を、少し余裕を持たせる
「最近お腹まわりがきつくなってきた…」
「太ももだけちょっと張ってきて、シルエットが気になる…」
そんなときに、
“もうこのスーツはお別れかな”ではなく、
“今の自分に合わせて整えなおす”という選択肢を持っていただきたいのです。
2. 年齢や役職に合わせて、印象をアップデートする
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ボタンを変えるだけで、雰囲気を少し落ち着かせる
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ラペル幅を変えて、よりクラシックに・よりシャープに印象を寄せる
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パンツの丈感を、トレンドに寄せて微調整する
入社当初に選んだ、少し元気な印象のネイビー。
30代・40代になり、部下も増えた今は、
同じネイビーでも落ち着きや重厚感が欲しくなったりします。
まったく新しく買い直さなくても、
少しの仕様変更や補正で、「今の自分」に似合う一着へと育っていきます。
3. 着るシーンの変化に合わせて使い分ける
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営業職 → 内勤・管理職になり、動きやすさより“きちんと感”が大事になる
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冠婚葬祭が増え、フォーマル寄りの着こなしが必要になる
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人前に立つ機会が増え、写真映えを意識したい
同じスーツでも、シャツやネクタイ、靴、コートとの合わせ方で
見え方は大きく変わります。
スーツそれ自体を作り変えるだけでなく、
コーディネートの提案も含めて「育てていく」イメージです。
既製スーツにはない、“育てられる余白”
既製スーツとオーダースーツの違いは、
「最初にフィットしているかどうか」だけではありません。
オーダーで仕立てることで生まれるのは、
“後から育てていける余白”です。
補正を前提にした作り
最初からお客様の体に合わせて作るからこそ、
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どこを出せるか
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どこまで詰められるか
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どの縫い代を残しておけば、将来の体型変化にも対応できるか
といったことを考えながら設計していきます。
そのため、あとからの補正・微調整がしやすく、
「少し太ったから、もうこのスーツは無理…」
と諦めてしまう必要が少なくなります。
“もったいない”から“頼もしい”一着へ
既製スーツだと、
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着られなくなった
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似合わなくなった
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お直ししてまで、これを長く着るほどの愛着はない
と感じてしまい、「タンスの肥やし」になることも多いもの。
一方、オーダーで作った一着には、
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生地を選んだ時間
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ボタンや裏地に込めたこだわり
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初めて袖を通した日の気持ち
そんなストーリーや思い入れが、自然と宿っています。
だからこそ、お直しをしてでも「また着たい」。
それが、“育てるスーツ”の大きな価値のひとつです。
メンテナンスも、“育てる”大事なプロセス
スーツは、ただ掛けておくだけでは長持ちしません。
日々のメンテナンスも、「育てる」上で欠かせない要素です。
1. 着用したら「休ませる」
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同じスーツを連日着続けない
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1日着たら、2日は休ませる
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木製ハンガーにかけて、肩のラインを守る
(クリーニングのハンガーにかけるのは厳禁です)
生地に汗や湿気が残った状態で連日着ると、
型崩れやテカリの原因になります。
お気に入りの一着こそ、丁寧に休ませてあげてください。
2. クリーニングに出し過ぎない
「大事なスーツだから、すぐクリーニングへ」
と思われるかもしれませんが、実はこれも要注意です。
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クリーニングは、年に1〜2回程度で充分
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普段のケアは、ブラッシングと陰干しでOK
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油汚れやシミが付いたときは、早めに相談
頻繁なクリーニングは、生地を痛めてしまうことも。
必要なときにプロの力を借りつつ、
日常のケアはご自宅でできることを淡々と続ける。
これも立派な“育てる行為”です。
3. ダメージを放置しない
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裾が少し擦れてきた
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ポケット口がヨレてきた
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ボタンが緩んできた
「まだ着られるから…」と放っておくと、
修復に手間がかかったり、場合によっては跡が残ることもあります。
小さなダメージのうちに、早めにご相談いただくことで、
きれいな状態を長く保ちやすくなります。
二着目・三着目で、さらに“育てる楽しさ”が増える
一着目のオーダースーツは、
どうしても「無難」「使いやすさ」優先になりがちです。
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ネイビーかチャコールグレー
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ビジネスでもフォーマルでも着やすいデザイン
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まずは失敗しないことが大事
ここから、二着目・三着目と増えていくと、
“育てる”楽しさはさらに広がります。
シーンで役割分担させる
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一着目:オールラウンドで使える“万能選手”
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二着目:仕事でよく使う“相棒スーツ”
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三着目:休日のジャケパン・結婚式ゲスト用の“遊びの一着”
といったように、
同じお客様のライフスタイルを見ながら、
少しずつラインナップを揃えていくことができます。
そうすると、
「今日はこの商談だから、あのスーツにしよう」
「久しぶりの友人の結婚式だから、この一着の出番だな」
と、その日の予定と気持ちに合わせて
“自分のクローゼットから選ぶ楽しさ”が生まれてきます。
私たちが大切にしているのは、「作ったあと」のお付き合い
オーダースーツ店の仕事は、
採寸して、生地を決めて、お渡しして終わり
ではないと思っています。
むしろ本番は、
お渡ししてから始まるお客様との付き合いの中にあります。
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「最近ちょっとウエストきつくなってきたんですが…」
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「役職が変わったので、もう少し落ち着いた雰囲気にしたくて」
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「このスーツ、10年後も着られるように育てていきたいんです」
そんなお話を聞きながら、
補正やメンテナンスを重ねていくうちに、
そのスーツは世界に一着だけの“相棒”になっていきます。
そして気づけば、
「あのとき作った一着が、人生のいろいろな場面に立ち会ってくれた」
そんな存在になってくれたら、とても嬉しく思います。
「育ててみたい一着」が気になったら
もし今、
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クローゼットに、なんとなく着ていないスーツがある
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体型や立場が変わって、「今の自分に合うスーツ」を考え始めている
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一生モノというより、“長く付き合える相棒”が欲しい
そんな気持ちが少しでもあれば、
「育てていける一着」を意識してみるタイミングかもしれません。
オーダースーツは、決して“高級な贅沢品”だけではなく、
毎日の仕事や人生の節目に寄り添いながら、
長く長く付き合っていけるパートナーです。
一度作って終わりではなく、
一緒に時間をかけて育てていくスーツ。
そんな一着との出会いを、
これからもお手伝いしていけたら嬉しいです。
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