イギリススーツの特徴
英国紳士が好んで着用するスーツスタイルを「ブリティッシュ・スタイル」と呼びます。イギリスはなんと言ってもスーツ発祥の地です。スーツの起源には諸説ありますが、少なくとも1846年にヘンリー・プールがサヴィル・ロウに店を構えたときには始まっているので、歴史は170年以上にもなります。
ちなみに「サヴィル・ロウ」とは、ロンドン中心部にある、テーラーの集まるストリートのことです。古くはナポレオン三世やチャーチル首相などもこの地で服を仕立てていました。日本でスーツを意味する「背広」の語源が「サヴィル・ロウ」だという説もあるほどです。さきほど名前の出た「ヘンリー・プール」は、そんなサヴィル・ロウ最古のテーラーとして、世界中のテーラーから尊敬されています。
イギリススーツの仕立て
鎧のようなスーツ。ブリティッシュスタイルを表現する際に頻出するフレーズです。つまりは、立体的で構築的なパターン&シルエットのジャケットを重厚な鎧に例えたもの。
ウエストにはシェイプを入れ、メリハリのきいたビジュアルに。肩から胸、背にかけて布のたるみが見られ、それが優雅なドレープを描くのもポイント。ところどころに取り入れられた凹凸のあるデザインが、着用者のダンディズムを高めてくれます。
イギリス特有の色使い
イギリススーツの特徴は、派手な色柄使いを好まず、ダークブルーやダークグレー、ネイビーやブラウン系など、ベーシックで無難な色のスーツが多く、柄もグレンチェックやピンストライプなど、メンズスーツにおける基本的な柄が好まれるという特徴があります。
イタリア特有のディティールとは
ディティール①
袖山の盛り上がった独特のラインは「コンケーブ・ショルダー」(コンケープド・ショルダー)などとも呼ばれます。ブリティッシュ・スタイル以外のナチュラルなショルダーラインとは型紙から違うのですが、近年ではこのようなコンケープ・ショルダーを作る技術者が少なくなっているとも言われています。本来はなだらかに傾斜しているはずの肩のラインをピッと上向かせることで、精悍な印象を作ります。
ディティール ②
ブリティッシュスタイルは、構築的でカチッとキマるのが特徴です。肩にもしっかりとしたパッドを入れるので、上部が立体的な構造になります。ブリティッシュ・スタイルは時に「重厚な鎧」に例えられますが、肩パッドはその形容に相応しい要素です。またしっかりとした肩パッドを入れることで、胸周りに軽く張りをもたせることができます。
ディティール ③
全体のパターンやシルエットバランスだけでなく、要所に散りばめられた実用的なディテールも、ブリティッシュスタイルを表現するアイコンとなっています。例えばジャケットのポケット。写真のようにまっすぐではなく斜めにカットされた切り込みポケットは「スラントポケット」と呼ばれますが、実は乗馬がルーツ。前傾姿勢で馬に乗る際も中の物が落ちにくく設計されているのです。英国において、乗馬は古くから紳士のたしなみ。紳士服たるスーツにその名残を残すのは、いたって自然な流れと言えます。
また、スーツの後ろ姿を決定づけるベントも、その誕生は乗馬から。馬に跨りやすいようセンターベントが生まれ、その後、馬上で剣を佩きやすいようサイドベンツに派生したと言われています。こと現在のブリティッシュスタイルでは、エレガントなサイドベンツが多く見られるようです。